預言―――――スコア。 その名の示す通り、この世の生命が辿るべき全ての筋書き、全てのしるべ。 それがオールドラントという惑星では、遺物として残っているのではなく、日々に取り入れられ 人々の生活の中心となっている。 呼べば大層に聞こえるし、その通り、重要なものでもあるが、それはごく一部に詠まれたもので、 あとは今日の天気や献立がどうだったり等、日常の些細な事象が、預言として存在しているのである。 そうして、それが外れるなどという事は、どんなに些細な事でも決して有り得ない。 「……よっこらせ」 広い中庭の植物への水やりと手入れを終え、立ち上がる。 年には逆らえず、随分と重く感じるようになってしまった腰を上げて、ペールはやれやれ、と肩を叩いた。 朝である。 今日も闇が払われ、光の時間がやってくる。 見上げる空から星は消え、青色が広がっていく。けれど。 「………雨、か」 昨日未明から強く吹き始めた風が、少しずつ鈍い色の雲を多く運んでくる。 湿ったような独特の"におい"が鼻をかすめた。 ぶわ、と俄かに強く吹いた風に嬲られる白髪を押さえつつ東を見据えるが、そこは雲に覆われ、いつもの日出の光がない。 晴れた、けれど、薄暗い朝だった。 (午前中はもつか………しかし、午後からはかなり降るじゃろうな) 預言を守り、管理するローレライ教団によって報される天候の預言など無くても、長年の勘で天の気分は大抵解る。 植物の世話や管理も、朝早くからそれに応じて変えなければならなかったから。 その勘が――――いいや、最早確信が――――告げている。今日というこの日は、かなり荒れる。 水を少なめにしておいてよかった。後は風に弱い植物の対処に取り掛かろう。 そうして、土に汚れた道具を手に集めながら、ふと"ある懸念"が脳裏を過ぎった。 先程から気にしていた事だが、落ち着いて考えてみると、重く頭をもたげてくる。 いつもは毎朝、控えめに手伝いに顔を見せるが、今日は姿を現さなかった。 ここ一週間ほど、出会った時のような元気が見受けられなくて、心配していたのだが。 気分を変えてやれないだろうかと、渡したあの花の調子はどうだ、と聞いてみても、 「……まだ、もうちょっと、咲かないみたいで…」と、ひどく申し訳なさそうに、苦笑して頭を下げた。 察するに、文字の勉強が思ったよりも先に進まないのだろう。何故なら、あの花は。 「……………」 動作を止めて、庭の隅の方の花壇へと目を馳せた。 あの日、に鉢植えに移して渡した時には、そこにある全てが一様に硬い蕾のままだった。 それが今では満開に白い花びらを綻ばせ、風に揺られながら空を仰いでいる。 あの花はもう、咲いていてもいい筈なのである。 方法は、決して難しくはない。元々野生に近い種で、人為的に育てるにあたって、一点を気をつけていれば 世話をしなくても勝手に花を開かせるくらいだ。水や光の調節も殆どいらないし、そう簡単に枯れる事もない。 ただ名前の意味を解すれば、うまくいくだろうと踏んでいたのだが。 けれども、それは、蕾を閉じたまま。 (……あまり気に病んでいなければ、いいがな……) そうは思うが、の事だ、とペールは溜息をつく。 頼れず、責任を感じて、また、周りを恐れて助けを求められないのだろう。 相手を思って提案したつもりが、逆に負担をかけているように感じるのは、気のせいではないかもしれない。 そして、もう一つ。 朝日が無くて薄暗い東棟の方へと、視線を移動させ、目を細くした。 (……ルーク様) ルークの様子も、ここのところ芳しくない。 ずっと、機嫌が悪いままである。ここまで長い事、癇癪が続くのも珍しい。 「いかんな……干渉が過ぎる」 目を閉じ、深く息をついた。溜息だった。 何かが、重みとなってるみたいに、または異物が入り込んだように、スッキリしない雰囲気だ。 ぎすぎすとして、いつに無く苛立ち、または脅える屋敷の人間達。 事は変に滞って、或いは躓いて、思うように転がらない。 城や他の貴族から何ぞ疑問の声が寄せられているのだろうか、ファブレ公爵の元へ使者が訪れる回数が増えた。 「………」 重たげに瞼を持ち上げて、肩を竦める。 およそ10日あまり前の、あの突然の光は、不意に開いた異界の口は、誰にとっても凶事でしかなかったのだろうか。 こちらにとっても。にとっても。 ヒトの形をした化け物が平穏だった屋敷の中をさざめかせ、掻き回し、歯車を狂わせていくというのは、 まぎれもない異物であり、不都合であり、厄介ごとでしか、人びとは捉えられないだろう。 (……あわれだな…) しかしとて望んでそうなったわけでも無し。まして彼女を捕らえているのは此方だ。 人格も考え方も、齢二十の割に成長しきっていない、いつも脅かされる事を恐れている、気の弱い人間。 故に、今この状況は、苦しいだろう。 もしや耐え切れないところにまで達したのか。 今日が現れなかったのは、それが憶測ではなさそうな可能性を訴えてくる。 早くみんな終わればいいと、そう思うのだが、その糸口がどこにあるのかも自分などには解らない。 出来る事と言えば、何事も無い事を祈り、見守る事だけ。 この崩壊し続ける毎日が、せめて誰にとっても、可能な限り優しくあれ、と、願う事しかできない。 壊れるのは、もう、止められはしない。 何かが変わる時は、何かが壊れる時だ。いい時も、悪い時も。 それが緩やかに訪れるのか、急速に訪れるのかは、誰にも解らない。 それでも、今日という一日は始まり、時は進んでいくのだ。 何を掴むために、 五本も指を持っていたんだろう。 私は、何処に行かなくてはならなくて、二本の足を貰ったんだろう。 今一度、天国の両親に問いたい。私に答えをくれるのは、あなたたちしかいなかった。 どうしても、訊きたい。私じゃもう、解らない。 何も掴めないのなら、こんな手、要らなかった。 何処へも行けないのなら、足なんか要らなかった。 見たくもない。聞きたくもない。 結局私は、何をしにこの世に生まれてきたんだろう?どうして、生きていなきゃならないの? 何にも、一つも、意味がないのなら、私――――― はっとすると、抱えた膝越しに、伸びっぱなしの雑草に覆われた地面を見た。 いつの時間も影を落としたままになっている其処は、狭くてじめじめとしている。 あれから――――ガイの前から逃げ出してから、がむしゃらに走り続けた。 とにかく誰にも見られたくなくて、顔を合わせるのが恐くて、人が来ない場所を求めて。 夜は暗くて、広い屋敷は方向も解らなくて、どこへ行けば自分が安心できるのか見当もつかないまま、逃げ回った。 いっそ、この高い塀を乗り越えて知らない場所へと飛び出そうかとも、思った。 けれどもやはり、自分は臆病で。 未踏の世界を見る勇気もなく、きっと実行しても、どうしていいのかもっと途方に暮れるだけだろう。 結局一人になれるのならどこでもいい、と、敷地内を彷徨うにとどまるのだった。 中庭は……駄目だ、ペールが来る。他の小さな休憩所にも、手を抜く事無く植物の手入れをしにくるし。 邸内……なんてもっての他。人に会う可能性がどこに居たって高い。もう嫌そうな顔を向けられるのはまっぴらだ。 そうして、疲れて腰を落ち着けたのは、窓もない物置小屋の壁と、邸を取り囲む塀に挟まれた、このただの隙間。 入り込んだ時はまだ夜中で、暗くて何も見えなかった。 「………………」 見上げてみると、青い空に雲が流れていくのが狭く切り取られた視界の先に見える。 朝になったんだ。気が付かなかった。 ずっと、目も、耳も、ふさいでいたから。 (………涙、出てこない……) 泣くのを我慢してきたからか、肝心な時に泣けなかった。 そのぶん発散出来なかったストレスを呑み込んで疲れて、疲れ果てて、溜息をつく。 「……ガイ、さん…」 思い出して膝を抱える腕が少し震えた。こわかった。 優しくしてくれた時の顔を思い出したかったのに、昨夜の冷たい瞳が脳裏に浮かぶ。 「……」 ルークはここ最近顔も見てないせいか、不機嫌そうな後ろ姿しか思い浮かべる事ができない。 皆、きらいになる。 「嫌い」の連鎖はどんどん広がって、顔も見たこともない人から蔑まれたりする。 私は恐れてばかりで、何にも出来ないまま、しまいに一人になる。 学校だとか、閉鎖的な社会空間の中で、その流れになるのが常だった。 人の目に触れる事で相手を不快にさせてしまうのなら、と、こうして人が来ない場所に隠れていた。 自分の中の水分が心配になるくらい、あの時は泣いてばかりいたのに。 感情と嗚咽が不完全に口をついて出るばかりで、今は目から雫がわずか一滴も、落ちてこない。 (……情けないなあ……) けれど、今になって、解ったような気がする。 涙を流すことで、自分を可哀想なのだと確認する事で、救われようとしていた。 そうやって自分の悪い所を見ないようにしていたんだ。 (…今は……せめて) 少しでも気付いたなら、こんなところで、情けないような事をしていたくない。 落ち着いたら、何と立ち上がって、出来ることをしなくちゃ。 「花に水……あげてないもんね……」 些細な存在でも、まだ自分を許してくれる存在があるのなら、私はそれにすがるしかないんだ。 「お早う御座います、ルーク様」 相変わらずの遅い目覚めに、ルークの部屋の雑事を担当するメイドがカーテンを開けた。 金具がレールを勢いよくスライドする音に、ぼんやりとした意識がゆっくりと覚醒する。 反射的に、身構えていた程の朝日の直射攻撃が無かったので、拍子抜け気味にルークはそろそろと瞼を開いた。 「ん、あ…?」 夢心地と現実の区別がつかないまま、目を擦りつつ身を起こす。 普通だったら思わず顔を綻ばせてしまうような美少年のそんな微笑ましい動作にも、慣れてしまったメイドは 気に留める事はなくテキパキと朝支度を進めている。 「ローレライ教団の預言によりますと、昼過ぎからお天気が崩れるそうですよ。今日は屋内でお過ごし下さいませね」 カーテンを纏めに掛かりながら、メイドの提示してきた話題にルークはフン、と鼻を鳴らしたくなった。 言われなくても。 ヴァン師匠は今日はどうせ来ないし、ペールは…あれから言葉を掛けられるのがばつ悪く思えて、中庭にも出たくない。 いつも通りガイを呼びつけてゲームでもするか、と、気持ち無く考えた。 けれど、最近ガイも何だか付き合い辛い気がする。 変に気を遣ってくる所などが――――特にの事で。 (……やり辛れぇったらねーよな……くそっ…) がしがしと頭を掻きながら、結局舌を打って不満を表に出してしまった事で、メイドが慌てて覚えのない非礼を詫びて来た。 こちらが気を悪くしたと思ったのだろう、けれどもそんな事どうでもいいと思って、無視した。 何かもう、色々と面倒くさい。気だるい。どういでもいい。まだ眠いし。 何をする気も起きないし、メイドを追い払ってもう一度寝なおしてやろうかと、うつらうつらしながら考えた。 珍しく、夢を見たせいだろうか。 浅い眠りの波間の中で、誰かに名前を呼ばれたような、気がする。 「さあ、ルーク様、お着替えはこちらにご用意致しましたから」 気をとりなおしたように、メイドがまた笑みで言葉をかけてくるのを、ぼんやりと耳に流しながら、思い出そうとした。 いつものような、痛みを伴う幻聴が呼び掛けてくるそれではない。もっと、現実じみた、でも、それは霞掛かって。 「……?」 聞き覚えがあるけれど、呼ばれ慣れていなくて、 「お食事は、今日も食堂で摂られますでしょう?もう御用意出来ておりますから」 それは、なんだかぎこちない。 どうにか思い出そうとする余り、意識がおろそかになって、口から言葉が漏れているのにも気付かなかった。 「……な、地味ゴリラ…は…?」 「…え?」 ひどく訝しげに返された声に、そこで漸くはっとする。 何を言っているのだろう、起きたときにがいないのは、ここ最近ずっと同じだ。 それに、アレはこちらを、酷く恐れている。名前を呼んでくるような事があるはずなんて無い。 「な、んでもない!……俺は眠いんだよ!朝飯もいらねえから、とっとと出て行けよな!」 不覚にも口から出てしまった発言を腹立たしく思い、それを含めてメイドを怒鳴りつけると、彼女は肩を揺らせて驚いた。 「あ……も、申し訳ありません、ルークさ…」 ガシャン と、言葉尻に耳障りな音が重なった。 剣幕に圧されて一瞬緩んでしまった彼女の手から滑り落ちたものが、崩れてその床を土で汚している。 どうやら、陽の当たる場所へと移そうとしていたようである。メイドの顔が、尚いっそう青くなった。 「ああっ…! わ、私、何て事を…! 申し訳ありません! 本当に、申し訳…」 取り乱して、おもむろに素手で散らばった土を集めようとする様子を見て、何となく決まり悪い気分を紛らわすよう頭を掻く。 「あ……ああ、んなの、別にいいって。……俺んじゃ、ねーし…」 元はといえば、八つ当たりもあったし。 ルークの機嫌如何によっては、もしかするとクビさえ飛んでいたかもしれない、と、お咎めを恐れていたメイドが 心底ホッとしたような顔で息をついた。 「申し訳ありません……お花は大丈夫だと思いますし、すぐに新しい容器を御用意致しますね」 そう言って、横たわる大きな蕾をつけた植物に触れようとした手が、ほんの少し躊躇する。 「…あら……これは"ノストック"?……可哀相に…咲けなかったのね」 僅かに残念そうに、花の名前らしきものを独り言として彼女は呟いた。 「知ってんのか?」 そっと手にのせられた、くたりとしてしまった花の蕾に目をやって意外そうに尋ねると、至極当然といったようにメイドは頷く。 「ええ、とても一般的な花ですから。色んな所に生えていますし、ルーク様も目にした事があるはずですよ。 確かペールが、お庭の花壇で育ててもいましたし」 だろうな、と、ルークはがペールからこの植物の鉢植えを受け取っているの思い出した。 しかし、どんなに大層なものを貰っているのかと思ったら、思ったよりつまらないものだったので拍子抜けする。 あのも、何をそんなに、咲かすのに苦労をしていたのだろう。 「……でも、これは…もう枯れてしまいますね。ここまで中の花が大きくなってしまったら…」 哀れむように、ただの一本の花を手に顔を伏せるメイドの様子が、理解できなかった。 何でだ? そこらへんに咲いてるっていうのなら、ここにある一本くらいが枯れたって、別にどうって事ないじゃないか。 鉢もそうだが、それなら花も綺麗に咲いてるものと、取り替えてくればいいのに。 「……ふーん、あっそ。んじゃ、もうソレ捨てとけよ。どーせ枯れんだろ?」 特に何も思わず、何でもない事のようにそう言うと、メイドは「え」と焦燥を含んだような目を向けてきた。 「で、でも……これは、どなたかが育ててらっしゃったものじゃ…」 そう言って口ごもる彼女が何を言いたいのか理解出来ず、命令をすぐに実行しない事に対して苛立ちを募らせた。 育ててたって何だって、枯れるものを置いておいたって仕方ないじゃないか。 「何だよ、別に珍しいモンじゃないんだろ?そのまんまじゃ汚ねえし、早く片付けろって」 焦れて、のせられた手の平の上から乱暴にノストックとやらを摘み上げると、ポイとそれを屑入れの中へ放った。 あっ、と名残惜しそうな顔をするメイドを横目に、事は終わりだと知らしめる様に鼻を鳴らす。 「……はぁ…ルーク様が、そう仰るのなら」 まあ自分などには直接関係ない事だが、と、戸惑いながらも主人に服する意の言葉が返ってきた。 その言葉はあんまり好きじゃない。責任を押し付けられてるみたいで。 言いたい事があるんだったら言えよ、と、どんなに訴えかけても、感情を含んだ顔を押し隠して結局みんな何も言わない。 そう言って、誰も逆らわない。自分がいいと言えばそうなったし、思い通りになってしまったから、それが正しい事なのだと 思わざるをえない。間違った事だなんて、思わなかった。 「それでは、私は床のお掃除をする道具を取りに行って参りますが… ……ルーク様、お食事を摂られないと、お体に障りますよ。よければ食堂に御越しくださいませ」 扉の前で一礼をして気遣う様子を見せるメイドに、ヒラヒラと手を払いながら曖昧な返事を返す。 彼女が出て行ったのを見届けると、やれやれと用意された着替えに手を伸ばした。 何だかもう、目が覚めてしまった。 ちらりと、砕け散った破片を視界に入れた後、屑入れの中の植物を顧みる。 他のゴミと一緒になって折れ曲がっているそれは、別に不自然には見えない。 ここ暫らく、言葉を交わす事は無かったが、の行動の端々は捉えていた。 甲斐甲斐しく世話をして、それでも咲かない花に顔を曇らせたり、到底読めなさそうな本を睨みつけていたり。 あんまりにも四苦八苦していたから、余程希少なものなのかと思っていたら、雑草よろしくな花だったとは。 結局最後は枯らせてしまうのだし。 やはり、特に何も思わない、と―――――そう思うのだが。 (……あいつ、どう思うんだろ…) そんな考えが過ぎった。あのメイドみたいに、悲しい顔をするのだろうか。 いや、別にいいじゃないか。花だって、その辺に咲いてる。 仕上げに上着のボタンをとめ終わり、息をついた所で、キイ、と、とてつもなく控えめにドアの開く音がした。 メイドにしては珍しい動作だ、と顔を向けると。 そっと中の様子を窺ってきたと、まともに視線がかち合う事になる。 「…―――――!」 瞬間、この世の終わりを見たとでもいうような、異常なまでに脅えきった瞳が、こちらを捉えた。 (な、何なんだよ……) 気まずさに舌を打ちつつ、昨日まで以上に恐れを強くした様子のを訝しく思いながら、ついっと目を逸らせた。 自分が部屋にいる事で、退散するかと思っていただが、どうしてもそういう訳にはいかないのか、 恐る恐ると中に入ってくる。 白々しいまでのお互いの沈黙に、何だか部屋の主たるこちらまでもが居心地悪い。 はいつも寝床にしている床の周辺まで来ると、きょろきょろと首を巡らせ始めた。 自分がいつも置いておいたはずの場所に、ソレがないのを不審に思っているのだろう。 何を探しているのか見当がついてしまったが、あえて言うのも何だか気まずいように思うし、 黙って部屋を出る事にしようとしたのだが。 「……これ」 ドアの取っ手を掴もうとしたところで、細い声がした。 「あの、……ご主人様」 予期しなかった声が、背に掛けられた。 微かに、震えている。怯えからか、それとも。 何かを押し込んだような声音は、そのまま無視する事が出来ない程度には、強かった。 「……何だよ」 振り返った先に見たのは、やはり理解出来ないような感情を湛えたの顔だった。 |
他人の気持ちを、自分に足りないモノを理解するには、まだ二人とも幼く。
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